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iDeCo を 5 年運用した運営者が書く NISA との違い・使い分け(年収別の優先順位)

年収別・ライフイベント別の使い分け早見

公開: 2026-05-04 / 最終更新: 2026-10-23

掛金の上限額は、2026年12月1日からの値で書いています。それまでの上限は、自営業・フリーランスが月68,000円(国民年金基金等と合算)、会社員・公務員が月20,000〜23,000円(勤務先の企業年金の有無による)、専業主婦(夫)が月23,000円です。

iDeCo と NISA、結局どっちから始めるべき?

私はこの記事を書くとき「iDeCo と NISA はどっちが得か」というシンプルな問いから始めました。でも数字を並べてみると、答えは「どっちか」じゃなくて「順番」なんじゃないか、と途中で考えが変わりました。ちなみに私自身は会社員として iDeCo を 5 年運用しつつ NISA も並行して使っています(運営者の iDeCo 運用体験談 に経緯と実数値を書きました)。両方やった上で見える順番の話を、この記事で書きます。

大きな違いをひとつ挙げると、iDeCo は 掛金が全額所得控除になります。NISA にはこれがありません。年収 500 万円の会社員が iDeCo に月 23,000 円積むと、年間でだいたい 4 万円台の節税。NISA だけ使っているとこれは丸ごと取り損ねます。

ただし iDeCo には大きなしばりがある。60 歳まで引き出せない。教育費にも住宅資金にも 1 円も使えない。なので「いつ使うお金か」で選ぶのが現実的です。

主な違いの比較表

項目 iDeCo 新NISA
掛金の所得控除 あり(全額) なし
運用益の非課税 あり あり
受取時の税金 あり(退職所得控除・公的年金等控除で軽減) なし
年間上限 職業により 20,000〜68,000円/月(2026年12月から 23,000〜75,000円) つみたて投資枠120万+成長投資枠240万=360万円
引き出し 原則60歳まで不可 いつでも可能
口座管理手数料 月171円〜(2027年1月の引落し分から186円〜。金融機関により異なる) 無料

受取時の税金、ここが一番誤解されている

比較表で「受取時の税金: iDeCo はあり、NISA はなし」と並べると、いかにも NISA のほうが得に見えます。でも、この行が誤解の温床です。iDeCo は退職所得控除を使えば、ほぼ無税で受け取れるケースが多い。計算の手間はかかるけど、結果としては「NISA = 受取無税」「iDeCo = 退職所得控除でほぼ無税」と並ぶ場面がほとんど。

例えば iDeCo 加入 30 年で残高 1,500 万円を一時金で受け取る場合、退職所得控除は 800 万 + 70 万 × (30 − 20) = 1,500 万円。残高 1,500 万円までは受取時の所得税・住民税ゼロです。退職金を別途受け取る人は控除枠を分け合うので注意が必要ですが、 自営業のように退職金がない人は丸ごと iDeCo に充てられる。

勤続年数ごとの退職所得控除の具体額は 退職所得控除の計算例 に整理しました。退職金との受取年をどう組むかで手取りが 100 万円前後動くケースは 退職金と iDeCo の受取タイミング で深掘りしています。

つまり「受取時に税金がかかるから iDeCo は不利」というのは、退職所得控除を計算に入れていない比較記事の単純化です。実態としては iDeCo の受取無税枠は NISA に十分対抗できる、というのが私の整理です。

「つみたてNISA」はもう古い名前

意外と知られていないのですが、2024年に新NISAが始まってから「つみたてNISA」という制度自体は新規受付が終わっています。今 NISA を始めると、新NISA のつみたて投資枠(年120万円)と成長投資枠(年240万円)を使う形。検索で「つみたてNISA」と入れたときに想定される情報は、ほぼ新NISAのつみたて投資枠のことです。

ややこしいので、本記事では「NISA = 新NISA(2024年〜)」の前提で書きます。旧つみたてNISA口座を持っている人はそのまま運用継続できますが、新規買付はできない仕様。

年間上限だけ見ると iDeCo は NISA に圧勝されるが…

iDeCo の上限は職業別で、2026年12月からは月23,000〜75,000円(それまでは月20,000〜68,000円)。年間でも28〜90万円。NISA は年360万円。数字だけ見ると NISA が4〜13倍。一見すると iDeCo は地味です。

ところが所得控除を加味すると景色が変わる。会社員が iDeCo に月23,000円(年27.6万円)入れた場合、年収500万円なら所得税・住民税合わせてだいたい42,000円戻ってきます。初年度の利回りに換算すると15%相当。これに運用益非課税が乗っていく。

NISA の運用益非課税はもちろん強い。でも所得控除という即効性のある節税は NISA にはありません。「上限額が小さい iDeCo は弱い」というのは半分しか合っていない、というのが私の感想。

iDeCoが向いている人、NISAが向いている人

iDeCo 寄りの人:

NISA 寄りの人:

こうやって並べてみると、両者の基準が「所得控除が効くか」と「お金を使う時期」の2軸でほとんど決まる。なので、片方しか選べないわけではなく、両方やる前提で「いくらずつ振り分けるか」のほうが現実的な問題です。

併用するメリット・デメリット

iDeCo と NISA は同じ年に並行して掛けられます。年金口座と投資口座は別物なので競合しません。

メリット側:

デメリット側を正直に書くと、こちらは少しだけある:

「併用したら税金が二重で取られる」みたいなことはありません。それぞれ独立した制度です。事務負担を減らしたければ、両方とも同じ金融機関でまとめると年末の書類管理が楽。

2026年12月改正で iDeCo はどう変わる?

ここは新しい情報なので一段詳しく。2026年12月の iDeCo 改正で、主に2点が動きます。

  1. 合算上限の引き上げ: 会社員・公務員は月62,000円に統一(従来は企業年金の有無で月20,000〜23,000円)。自営業は国民年金基金等との合計で月68,000円から75,000円に引き上げ
  2. 加入年齢の上限拡大: 65歳未満→70歳未満まで加入可能に(現行の65歳未満は2022年に60歳から引き上げ済み)

受取開始年齢を60〜75歳の幅で選べるのは2022年4月からで、今回の改正で変わる点ではありません。

特に1の影響が大きい。会社員の月23,000円上限が62,000円に約2.7倍。年間の所得控除枠が46.8万円増えます。NISA の上限は変わっていないので、改正後の iDeCo は「上限が小さいから弱い」という議論がさらに弱くなる。

ただし上限がそのまま自分の限度になるわけではなく、企業年金(DB・DC)や共済掛金がある人はそこから差し引かれます。詳しい改正点と職業別の影響は 2026年12月 iDeCo改正のポイント総まとめ でまとめています。

同じ商品を同じ利回りで運用したら、差は「税金と手数料」だけ

ここからは当サイトのシミュレーターで実際に計算した数字の話です。iDeCo と NISA で同じ投資信託を買って、同じ利回りで増えたとします。そうすると運用益の差は消えて、残るのは 3 つだけ。掛けるときの節税、受け取るときの税金、iDeCo の口座手数料。NISA はこの 3 つがどれもゼロです。

この「節税 − 受取時の税 − 手数料」が、NISA に対する iDeCo の上乗せ分になります。年収・月額・退職金の有無で並べてみました。書く前は「上限まで入れるほど得」だと思い込んでいたのですが、退職金がある人ではそうならないケースが出てきて、ちょっと驚きました。

退職金がない場合

年収 月23,000円 月62,000円
300万円約118万円約146万円
500万円約118万円約178万円
800万円約245万円約519万円
1,200万円約271万円約588万円

退職金 1,500 万円がある場合

年収 月23,000円 月62,000円
300万円約98万円約29万円
500万円約98万円約61万円
800万円約225万円約403万円
1,200万円約250万円約471万円

30 年間の合計。前提: 会社員(企業年金なし・扶養なし)/30 歳から 60 歳まで拠出/運用利回り年 3%(iDeCo と NISA で同じ)/60 歳で受取開始し、一時金・年金・併用はシミュレーターが手取り最大のものを選択(年金受取中の利回り 0%)/退職金は勤続 38 年で 60 歳に受取/口座手数料は月 186 円(2027 年 1 月以降の額)/節税で戻ったお金は再投資しない。年収 1,000 万円は 800 万円と同じ値でした(所得税率が同じ 20% のため)。

退職金がない人は素直で、月 62,000 円まで入れるとどの年収でも上乗せが増えます。年収が高いほど節税の率が上がるので、伸び方も大きい。

この記事で一番意外だったのは 2 つ目の表の上の 2 行です。退職金 1,500 万円がある年収 300 万〜500 万円の人は、月 23,000 円なら約 98 万円の上乗せなのに、月 62,000 円まで増やすと 29 万〜61 万円に減ってしまう。

理由は退職所得控除の分け合いです。退職金と iDeCo を同じ年に一時金で受け取ると、控除は 1 つにまとめて計算されます(勤続 38 年なら 2,060 万円)。退職金 1,500 万円でその大半を使ってしまうので、iDeCo の残高が増えるほど枠からはみ出し、年金で受け取る分にも税金がかかってくる。一方、この年収帯は所得税率 5% なので、掛けるときの節税は掛金の約 15%(所得税 5%×1.021+住民税 10%)しかありません。受け取るときの税のほうが速く増えていく、という構図です。

月額を 3,000 円刻みで試すと、年収 300 万円・500 万円とも月 32,000 円前後が山(上乗せ約 104 万円)で、そこから先は増やすほど減りました。受取開始を 65 歳・70 歳・75 歳にずらしても逆転はせず、遅いほど差が開いています。年収 800 万円以上だと所得税率が 20% 以上になるので、退職金があっても月 62,000 円まで入れるほど上乗せは増え続けました。

なので「改正で月 62,000 円まで入れられるようになったら、全部 iDeCo に」は、退職金がある中低所得の人には当てはまらない、というのが私の結論です。上限の手前で止めて、残りは NISA に回したほうが手元に残る。退職金の額や勤続年数で山の位置は動くので、自分の数字で月額を変えながらシミュレーターで比べてみてください。

気をつけたい前提が 3 つあります。利回り 3% は仮定で、利回りが高いほど残高が増えて受取時の税も増えるので、上乗せは小さくなる方向に動きます(退職金 1,500 万円・年収 500 万円・月 62,000 円なら、利回り 0% で約 228 万円、3% で約 61 万円)。年金で受け取る分にかかる国民健康保険料・介護保険料は計算に入れていません(入れると年金受取がさらに不利になる方向。iDeCo と社会保険料に整理しました)。公的年金の額は年収から見積もった簡易推計です。

年収別 どっちを優先する?(ここが一番伝えたい)

「両方やるべき」と書いておいて何ですが、現実には毎月の余裕資金には限りがあります。私の優先順位はこちら。

年収300万〜400万円

所得税率5%なので、節税は掛金の約15%。月5,000〜10,000円なら年約9,000〜18,000円、月23,000円で年41,690円です。それでも NISA だけより iDeCo を並行させたほうが得。NISA を主軸に、iDeCo は最低額からスタート、という入り方が現実的です。退職金1,500万円で試算すると、上で書いたとおり月3万円前後より上は NISA に回したほうが手元に残りました。

年収500万〜700万円

所得税率5〜20%。iDeCo を上限まで使う優先度が一気に上がるゾーン。月23,000円(会社員上限)入れて年4〜8万円の節税。NISA はその節税分を回すだけでも十分回ります。

年収800万〜1,000万円

所得税率20〜33%。iDeCo の節税恩恵が最も大きい層。月23,000円(改正後は月62,000円)を必ず使い切る。NISA も並行で。節税は月23,000円で年83,959円、月62,000円なら年226,325円。これを取り損ねるのは痛い。

年収1,000万円超

所得税率33〜45%。iDeCo の節税効果は青天井に近づく。一方で NISA の年360万円枠も活用余地が大きい。両方上限が現実的な選択肢に入ってくる年収帯です。

ざっくり「年収500万円を超えたら iDeCo を優先」と覚えておけば大きく間違えません。ただし退職金がある年収500万円以下の人は、上限まで埋めるより月3万円前後で止めるほうが得、という試算になりました(退職金1,500万円の場合)。逆に専業主婦や扶養内パートのように所得税がほぼかからない人は、iDeCo の節税が効かないので NISA 一本のほうが合理的。

併用するなら順序はこれ

私が記事を書きながら整理した、家計目線での実用的な順序。

  1. 生活防衛資金(生活費の半年分)を現金で確保
  2. NISA で月10,000〜30,000円ほど積立スタート(流動性のある中期資金)
  3. 家計に余裕が見えてきたら iDeCo を月5,000円から開始
  4. 収入が安定してきたら iDeCo の上限を目指して少しずつ増額
  5. 余力があれば NISA の枠も拡大していく

NISA をいくら積み立てるとどのくらい増えるか、年間枠・生涯枠(1,800万円)や売却後の枠復活をどう使うかは、 NISAシミュレーターで具体的に試算できます。枠の仕組みそのものは新NISAの仕組みの解説にまとめています。

最初から iDeCo を上限まで入れると、急な出費に対応できなくなって辛い。先に流動性を確保してから iDeCo に踏み込むのが、続けるコツだと思います。30代の方は教育費・住宅・転職との両立も論点になるので、30代から始めるiDeCo も併せて読むと判断しやすいです。

注意点

執筆・運営

この記事は MoneyTools Lab(iDeCo 最適受取シミュレーター運営)が執筆・公開しています。運営者は税理士・ファイナンシャルプランナー・社会保険労務士等の有資格者ではありません。本記事の内容は参考情報としてお読みいただき、具体的な税務判断・資産運用のご相談は専門家へお問い合わせください。

運営者自身も iDeCo の加入者です。運用歴・計算の検証方法・AI の利用範囲は 運営者について に書いています。

運営者情報・お問い合わせ

制度根拠・出典(一次情報)

本記事の計算・解説は、以下の一次情報(公的機関の公式ページ)に基づいています。

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