短期間でも節税メリットは十分
公開: 2026-04-20 / 最終更新: 2026-10-24
掛金の上限額は、2026年12月1日からの値で書いています。それまでの上限は、自営業・フリーランスが月68,000円(国民年金基金等と合算)、会社員・公務員が月20,000〜23,000円(勤務先の企業年金の有無による)、専業主婦(夫)が月23,000円です。
私は本サイトを運営しながら iDeCo を 5 年運用してきた身なんですが、「50代からのiDeCoは遅い」「運用期間が短いから損」というフレーズはずっと気になっていました。気になっていたので、当サイトのシミュレーターを実際に回してみたんです。出てきた数字は、想像していたより手堅い方向。たとえば 55歳・年収700万・月23,000円で65歳まで10年積み立てると、運用益と節税の合計で約121万円のプラス。元本276万円に対して44%の上乗せです。
2026年12月の改正で、iDeCo は70歳になるまで(69歳の間も)積み立てられるようになりました。50歳から始めれば最大20年、55歳でも15年。短期戦と呼ぶには長めの期間です。
ただ、年収帯と開始年齢で結果は大きく動きますし、会社の年金制度(企業型DC・DB)の有無で iDeCo の上限が変わります(後で見る例では月42,000〜62,000円)。「自分の場合はどうなるか」を判断する材料を、ひととおり並べていきます。最後に「老後2,000万円問題のうち iDeCo で何割埋まるか」も実数で出しました。
まず、いちばん気になるであろう「元が取れるのか」から。極端なケースとして、運用利回りを0%に固定して計算しました。元本だけで一切増えない前提です。
55歳・年収700万・月23,000円・10年積立、運用益ゼロ。それでも累計の節税が約76万円。元本276万 + 76万で受取総額は352万円になります。iDeCo の口座管理手数料は月171円〜程度(2027年1月の引落し分からは186円〜)なので、10年で2万円ちょっと。これを引いてもおよそ74万円のプラスです。
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 元本 | 2,760,000円 |
| 運用益(年利0%) | 0円 |
| 10年累計節税 | 約760,000円 |
| 口座管理手数料 | 約22,000円 |
| 合計プラス | 約740,000円 |
※ 元本は月23,000円×10年、手数料は月186円×120か月で計算しています。
運用がまったく増えなくても、節税だけで損益分岐点は10年以内に通過します。50代の主軸を「節税で確実にプラスを取り、運用は副次的」と割り切れる根拠が、この数字です。
※ 年利3%で運用すると、運用益が約45万円乗ります。10年後資産は約321万円、合計プラスは約121万円(次章)。
運用利回りを iDeCo の実績中央値あたりの3%に戻すと、こうなります。
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 元本(月23,000円 × 10年) | 2,760,000円 |
| 65歳時点の資産 | 3,214,053円 |
| 運用益 | 454,053円 |
| 10年累計節税 | 759,444円 |
| 合計プラス | 1,213,497円 |
運用益45万・節税76万・合計121万のプラス。元本276万に対して44%の上乗せです。ここで一番伝えたいのは、節税76万のうちわけが「年収700万の限界税率で月23,000円を10年拠出した結果」だという点。運用がうまくいくかどうかにかかわらず、毎年確実に積み上がる数字です。
※ 利回り3%は厚生労働省が公表している iDeCo 運用実績の中央値あたり。1%なら運用益は約14万、5%なら約81万に変わります。
節税は年収にきれいに比例しません。所得税の累進ブラケットで段がつくので、同じ月23,000円・10年でも年収帯でこれだけ差が出ます。
| 年収 | 所得税率 | 10年の節税 | 合計 |
|---|---|---|---|
| 400万円 | 5% | 約42万円 | 約87万円 |
| 500万円 | 5% | 約42万円 | 約87万円 |
| 600万円 | 10% | 約56万円 | 約101万円 |
| 700万円 | 20% | 約76万円 | 約121万円 |
| 800万円 | 20% | 約84万円 | 約129万円 |
| 1,000万円 | 20% | 約84万円 | 約129万円 |
※ 合計は利回り3%の運用益を含みます。
400万と500万は節税額が同じで、そこから段がつきます。500万→600万で約14万円、600万→700万でさらに約20万円の差。所得税ブラケットが5%→10%→20%と1段ずつ上がるためです。同じ月23,000円でも、ブラケットが1段上がると節税額が跳ねる。
一方、800万から1,000万までフラットなのは、月23,000円・10年では拠出総額が276万円と少なめで、課税所得を所得税23%ブラケットの下まで押し下げきれないため。高所得帯で効果を引き出すなら月額を上げるほうが筋。次章で見ます。
※ 年収別の詳細は 年収別 iDeCoの節税額早見表 で整理しています。30〜40代の数値感は 30代から始めるiDeCo で開始年齢別の比較を組んでいます。
iDeCo の月額上限は、会社員でも一律ではありません。会社の年金制度(企業型DC・DB)の有無で、こんなに違います。
| 会社の年金 | iDeCo上限 | 10年の節税 | 合計 |
|---|---|---|---|
| なし | 62,000円 | 約171万円 | 約293万円 |
| DB あり | 52,000円 | 約146万円 | 約249万円 |
| DC あり | 42,000円 | 約122万円 | 約205万円 |
条件は「55歳・年収700万・10年・利回り3%」で揃え、月額だけ変えています。DB は月10,000円相当、DC は月20,000円拠出の想定です。10年の拠出額は上限×120か月で、なし744万円・DB あり624万円・DC あり504万円。DC/DB なしで満額拠出すれば、合計プラスは約293万円。月23,000円の主軸ケース121万円の2.4倍です。
自分の会社にどんな年金制度があるかは、給与明細の天引き欄でだいたい見えます。「企業型確定拠出年金」「確定給付」と書かれた行の有無を確認するか、総務に「確定給付年金(DB)と企業型DCの加入状況」と尋ねれば1分で分かります。50代でこの確認をしないまま月23,000円で固定してしまうのは、年に数十万円の機会損失になりかねません。
年収700万・月23,000円・利回り3%を固定して、開始年齢だけを変えてみます。70歳になるまで積み立てられるので、50歳開始なら20年、60歳開始なら10年。元本は月23,000円×12か月×年数(50歳開始なら552万円)。合計は運用益と累計節税を足したプラスです。
| 開始 | 年数 | 運用益 | 節税 | 合計 |
|---|---|---|---|---|
| 50歳 | 20年 | 約203万円 | 約152万円 | 約355万円 |
| 52歳 | 18年 | 約161万円 | 約137万円 | 約298万円 |
| 55歳 | 15年 | 約108万円 | 約114万円 | 約222万円 |
| 58歳 | 12年 | 約67万円 | 約91万円 | 約158万円 |
| 60歳 | 10年 | 約45万円 | 約76万円 | 約121万円 |
| 63歳 | 7年 | 約21万円 | 約53万円 | 約75万円 |
50歳と60歳を比べると、合計プラスは355万 vs 121万で約3倍差。内訳を見ると運用益の差が約4.5倍(203万 vs 45万)に対して、節税の差は約2倍(152万 vs 76万)。「期間が長いほど複利が効く」という常套句が、ここで非線形に立ち上がっています。
ただ、60歳開始でも121万円のプラスは出ます。元本276万に対して44%の上乗せ。「60歳になってからでは無理」と思っているなら、この数字を一度見ておく価値があります。
50代でググるとほぼ確実に出てくるのが「老後 2,000 万円問題」。金融庁の試算で、高齢夫婦無職世帯が月 5.5 万円の赤字、30 年で約 1,980 万円不足、というやつです。この 2,000 万円のうち iDeCo で何割埋まるのか、当サイトのシミュレーターで実数を出してみました。
前提は「55歳・年収700万・10年積立・利回り3%・退職所得控除フル活用で受取」。月額は主軸ケース(月23,000円)と満額ケース(月62,000円・DC/DB なし)の2パターン。
| 項目 | 月23,000円 | 月62,000円 |
|---|---|---|
| 10年の累計節税 | 約 76 万円 | 約 171 万円 |
| 65歳の資産 | 約 321 万円 | 約 866 万円 |
| 受取時の税 | 0 円 | 約 37 万円 |
| 手取り資産 | 約 321 万円 | 約 829 万円 |
| 手取り+節税 | 約 397 万円 | 約 1,000 万円 |
| 2,000万円のうち | 約 20% | 約 50% |
主軸ケースで2,000万円の約 20%、満額ケースで約 50% を iDeCo 単独で埋める計算。退職所得控除は加入年数 10 年で 400 万円なので、主軸ケースの 321 万円は全額非課税で受け取れます。満額ケースの 866 万円は控除 400 万円を超える 466 万円が1/2課税の対象ですが、それでも手取りで 829 万円残る。
ここで強調したいのは、iDeCo は単独で 2,000 万円を埋める制度ではないこと。退職金(厚労省統計で大卒男性平均約 2,000 万円、中堅企業で 1,000〜1,200 万円)・公的年金(夫婦合算で月 22 万円が標準モデル)と組み合わせて、2,000 万円不足のうち「税優遇で確実に上乗せできる枠」を担う位置づけです。「2,000 万円問題は退職金と年金でほぼ埋まる、足りない分を iDeCo の税優遇で取りに行く」と考えると、月23,000円から始めても 20% 分の上乗せは十分な戦果です。
※ 退職金との重なり方によっては「10年ルール」「19年ルール」で控除が削られる場合があります。詳しくは iDeCo退職所得控除の計算例 と 退職金とiDeCoの受取タイミング を参照してください。
50代でiDeCoを始めるのは、若い世代にはない優位性が3つあります。順に書きます。
① 教育費のピークが抜けている
子どもが大学卒業まで進むと、毎月10〜20万円規模の教育費負担から解放されます。この浮いた分をそのまま iDeCo に回せれば、月額を上限まで上げる現実味が一気に増す。30代の主軸が「月10,000円から段階的に増額」だとすると、50代後半は「いきなり満額」が成立しやすい年代です。
② 収入のピーク帯にいる
年収が高いほど所得税のブラケットが上がり、同じ拠出額に対する節税額も大きくなります。前章の通り、年収700万の限界税率は20%で、節税額は500万のときの約1.8倍。50代の年収ピークはちょうど iDeCo の節税効率が最大化される帯にハマります。
私自身は30代から、会社員の上限いっぱいの月23,000円で積み立てています。同じ月23,000円でも、当サイトのシミュレーターで比べると節税額は年収500万で年約4.2万円、700万で年約7.6万円と、倍近く違います。50代でブラケットが20%に乗っている人は、同じ掛金でも節税の戻りが大きい時期にいる、ということです。
③ 退職金との出口設計が見える
会社の退職金がいつ・いくら出るかは、50代になればだいたい見えてきます。退職金と iDeCo の一時金を近い年に受け取ると、通称「10年ルール」「19年ルール」で退職所得控除が削られます。退職金が先だと、iDeCo の受取上限(75歳)までに19年ルールの期間を抜けられないので、iDeCo を年金や併用で受け取って控除の取り合いを避ける、といった組み立てになります。退職金の額と時期が見えた状態で受取方法を決められるのは、50代から始める利点です。詳しくは 退職金とiDeCoの受取タイミング で書いています。
50代から始める場合、運用期間が10〜20年と短めなので、商品選びは「無理しない」が基本です。「全部定期預金」でも「全部株式」でも極端すぎるので、いくつかのパターンで考えます。
運用利回り0%でも節税で十分プラスになるのは前述のとおり。なので、リスクを取ってリターンを狙う必要は本質的にはありません。一方、年利3%が出れば運用益45万円が乗るので、無視するには大きすぎる。ここがバランスの取りどころです。
配分パターン別に、55歳・月23,000円・10年で65歳資産を出してみました。
| 配分 | 利回り | 65歳資産 | 運用益 |
|---|---|---|---|
| 元本確保型 | 0% | 約276万円 | 0円 |
| 元本7・バランス3 | 1.2% | 約293万円 | 約17万円 |
| バランス型 | 3% | 約321万円 | 約45万円 |
| 外国株式 | 5% | 約357万円 | 約81万円 |
※ 元本7・バランス3 は元本確保型70%+バランス型30%(利回りは加重で1.2%)、バランス型は株50:債券50、外国株式は外国株式インデックス100% です。
「元本確保 70% + バランス型 30%」と「バランス型 100%」で運用益の差は約 28 万円。10 年で見ると意外と小さい。10年弱で見るとリスク資産の比率を上げるほどリターンが伸びますが、下落のタイミングで受取が来ると元本割れの可能性も上がる。50代の場合、節税76万円のベースが揺るがないので、運用益の上振れを狙うより「下振れを抑える」設計の方が筋。
実際の主流は、定期預金など元本確保型を6〜7割、残りをバランスファンド(株と債券のミックス)に置くあたり。投資信託は1本で分散投資になるバランス型を選べば、商品選びで迷う場面は最小化できます。株式100%は、運用期間が10年以下になると下落から戻る前に受取が来るリスクがあるので、50代後半以降はあまり推奨されません。
※ 商品選びは金融機関ごとに用意されている商品が違います。手数料の安いネット証券が有利で、信託報酬0.2%以下のインデックス型が候補に上がりやすい構図。
この記事は MoneyTools Lab(iDeCo 最適受取シミュレーター運営)が執筆・公開しています。運営者は税理士・ファイナンシャルプランナー・社会保険労務士等の有資格者ではありません。本記事の内容は参考情報としてお読みいただき、具体的な税務判断・資産運用のご相談は専門家へお問い合わせください。
運営者自身も iDeCo の加入者です。運用歴・計算の検証方法・AI の利用範囲は 運営者について に書いています。
本記事の計算・解説は、以下の一次情報(公的機関の公式ページ)に基づいています。