MoneyTools Lab ロゴ MoneyTools Lab

ふるさと納税の控除はどう決まるのか

限度額の式がどこから出てくるのかと、この計算に使っている制度値の出どころを公開します。

ふるさと納税の解説記事はいくらでもあります。ただ「限度額は年収と家族構成で決まります」で終わっているものが多くて、 自分でシミュレーターを作るときには結局ぜんぶ調べ直すことになりました。 このページは、そのとき手元に積み上がった内容をそのまま書いています。

前半は制度の仕組み、後半はこのツールが使っている制度値と、その確認方法です。 後半のほうが、たぶん他では読めない部分だと思います。

寄付なのに、実質は税金の移動に近い

ふるさと納税は名前のとおり自治体への寄付です。ただ、寄付額から 2,000 円を引いた金額が、 その年の所得税とその翌年度の住民税から差し引かれます。上限の範囲内であれば、 手元から出ていく実質的な負担は 2,000 円だけということになります。

この「上限の範囲内であれば」がくせもので、上限を 1 円でも超えた分は素直に自己負担になります。 だから上限額が知りたくなるわけですが、その金額は次のような仕組みから出てきます。

控除は 3 つに分かれている

ひとまとめに「控除」と呼ばれていますが、中身は 3 本に分かれています。寄付額を X とすると、こうなります。

所得税分 (X − 2,000) × 所得税率 × 1.021

住民税・基本分 (X − 2,000) × 10%

住民税・特例分 (X − 2,000) × (90% − 所得税率 × 1.021)

3 つを足すと (X − 2,000) × 100% になります。だから自己負担が 2,000 円で済む、という話です。 所得税率にかかっている 1.021 は復興特別所得税(2.1%)の分で、2037 年分までこれが乗ります。

上限を作っているのは「特例分」の天井

3 本のうち特例分だけに上限があります。住民税の所得割額の 20% までです。 ここを超えた分は、どの控除にも吸収されずに自己負担として残ります。

つまり「特例分がちょうど所得割の 20% に届く寄付額」が、自己負担 2,000 円で収まる限界ということになります。 式にすると、こうです。

限度額 = 住民税の所得割額 × 20% ÷ (90% − 所得税率 × 1.021) + 2,000

このツールはこの式で計算し、最後に 1,000 円未満を切り捨てて表示しています。 切り捨てにしているのは、上振れした目安を出して上限超過を招くより、少し控えめなほうが実害が小さいからです。

同じ年収でも上限が違う理由

式の中で人によって変わるのは、住民税の所得割額と所得税率です。所得割額は課税所得の 10% なので、 控除が増えて課税所得が下がると、所得割も下がり、連動して上限も下がります。

扶養が増えたとき、社会保険料が高いとき、iDeCo を始めたときに上限が動くのは、 すべてこの経路です。金額の具体例は別の記事に分けて書いています。

住宅ローン控除があると式がもう一本増える

住宅ローン控除を受けていると、所得税がすでに小さくなっています。すると上の式が前提にしている 「所得税分が実際に戻ってくる」が崩れることがあります。

所得税から引ききれなかった住宅ローン控除は翌年度の住民税に回せますが、これにも上限があって、 課税総所得金額等の 5%、最大 97,500 円までです(令和 4 年以降に居住を開始した場合)。 回しきれなかった分は消えます。

そこでこのツールは、住宅ローン控除の入力があるときだけ、もう一本の式と比べて小さいほうを採用しています。

もう一本 = 住宅ローン控除を引いた後の所得税額 ÷ (所得税率 × 1.021) + 2,000

こちらが選ばれたときは、画面に「住宅ローン控除により所得税からの還付分が縮小したため、 目安上限額が標準式より下がっています」と出ます。

住宅ローン控除が無いときは、このもう一本を使いません。使ってしまうと、所得税額が小さい方で 限度額が 2,000 円に張り付く不連続な段差ができて、実態と合わなくなるためです。

このツールが計算していること、していないこと

対象は令和 8 年分(2026 年分所得)で、令和 8 年度税制改正(令和 8 年法律第 12 号)を反映しています。 住民税は令和 9 年度(令和 8 年所得への課税)を想定しています。

扱っている控除は次のとおりです。

給与所得控除、基礎控除(所得制限あり)、配偶者控除・配偶者特別控除、老人控除対象配偶者、扶養控除、 特定親族特別控除、障害者控除(本人・配偶者・扶養親族)、ひとり親控除、寡婦控除、社会保険料控除、 小規模企業共済等掛金控除(iDeCo)、生命保険料控除、地震保険料控除、住宅ローン控除、所得金額調整控除、 住民税の調整控除。

扱っていないもの

医療費控除、勤労学生控除、雑損控除、ふるさと納税以外の寄附金控除、事業所得や不動産所得などの合算、 自治体独自の超過税率。住民税の調整控除に使う人的控除の差額は、配偶者については「一般」のみを実装していて、 老人控除対象配偶者の差額には対応していません。令和 3 年以前に居住を開始した住宅ローン控除の特例 (7%・136,500 円)も範囲外です。

ずれる原因として一番大きいのは社会保険料

社会保険料を入力しない場合、年収の 15% を概算として使います。実際の保険料率は 加入している健康保険組合や住んでいる地域で違うので、ここが試算と現実のずれの主な出どころになります。 源泉徴収票に実額が載っているので、正確に出したいときは入力してください。

計算に使っている制度値と、その確認方法

ここからが、このページを作った理由です。税率や控除額は調べれば出てきますが、 「どの資料で、いつ、何を確認したのか」まで書いてあるものは少ないと感じました。 このツールでは制度値を 1 つのファイルにまとめ、根拠を項目ごとに残してあります。その中身を抜き出したのが下の表です。

項目 使っている値 根拠と確認方法
控除の上限式 所得割 × 20% ÷ (90% − 所得税率 × 1.021) + 2,000 総務省 ふるさと納税ポータルサイト
自己負担額 2,000 円 同上
住民税の所得割 10% 標準税率。自治体独自の超過税率は反映していない
復興特別所得税 2.1%(所得税額に対して) 2037 年分まで
所得税の速算表 5%〜45% の 7 段階 国税庁の速算表と一致することを 2026-06-13 に照合
給与所得控除 最低保障 74 万円(適用範囲 給与収入 220 万円以下) 国税庁 No.1410。令和 8 年改正で 65 → 74 万に(本則 69 万+令和 8・9 年の特例 5 万)
基礎控除 本則 62 万円+中低所得帯への期間限定の上乗せ 国税庁の令和 8 年改正ページ・同パンフレット、財務省 令和 8 年度税制改正大綱
住民税の調整控除 人的控除差の合計に 5%(市 3%+県 2%) 地方税法 市町村民税=第 314 条の 6、道府県民税=第 37 条。2026-06-19 に e-Gov 法令 API で 見出しと本文を一次確認
配偶者特別控除の人的控除差 令和 8 年度以降は計算しない(差額ゼロ) 仙台市・鎌倉市の公表資料と静岡市の公式ページで 2026-06-13 に一致を確認。 配偶者控除の所得要件引き上げで、旧配特帯が配偶者控除に取り込まれたため
特定親族特別控除(住民税) 45〜3 万円の 9 段階 町田市・葛飾区・大阪市の 3 つの独立した公表資料が一致することを 2026-06-13 に確認
住宅ローン控除の住民税転送 課税総所得金額等の 5%、上限 97,500 円 総務省/国税庁 No.1211-1(令和 4 年以降の居住者は一律)
社会保険料(未入力時) 年収 × 15% の概算 実額が分かる場合は入力を推奨。ずれの主因になる

調べ直して間違いが見つかったこと

調整控除の条番号について、以前のメモに「道府県民税=地方税法 第 37 条の 3」と書いていました。 e-Gov の法令 API で本文を引いたところ、第 37 条の 3 は外国税額控除で、調整控除は第 37 条でした。 計算結果は変わりませんでしたが、出典としては間違っていたので直しています。

こういうものは、二次情報どうしを見比べても気づけません。自治体の公表資料や法令の原文に当たると、 同じ話でも書き方が違っていて、ずれている箇所が浮かび上がります。 特定親族特別控除の住民税額を 3 つの自治体の資料で突き合わせたのも、同じ理由です。

間違えやすいところ

申請を忘れると控除されない

寄付しただけでは控除は始まりません。ワンストップ特例(寄付先が 5 自治体以内などの条件があります)か、 確定申告のどちらかが必要です。医療費控除などで確定申告をする年は、ワンストップの申請が無効になる点に注意が必要です。 違いはワンストップ特例と確定申告の使い分けに書いています。

寄付の名義

控除を受けるのは寄付した本人です。世帯のうち収入の多い人の名義で寄付したつもりが、 別の家族の名義になっていると、その人の上限で判定されます。クレジットカードの名義も合わせてください。

他の控除を使うと上限が下がる

医療費控除のように課税所得を下げる控除を使う年は、住民税の所得割が減るので上限も下がります。 このツールは医療費控除に対応していないため、大きな医療費がある年は試算より上限が低くなると考えてください。

シミュレーターで自分の上限を試算する

よくある質問

上限額を超えて寄付するとどうなりますか

超えた分は控除されず、そのまま自己負担になります。寄付が無効になるわけではなく返礼品も受け取れますが、 税金は戻りません。

自己負担の 2,000 円は寄付先ごとにかかりますか

寄付先ごとではなく、その年の寄付全体に対して 2,000 円です。5 自治体に分けても、 合計から差し引かれる自己負担は 2,000 円のままです。

このシミュレーターの結果と、自治体が出す金額がずれることはありますか

あります。上限額は自治体が確定させた課税所得から決まるため、試算はあくまで目安です。 社会保険料を概算のまま計算した場合や、当ツールが扱っていない控除がある場合はずれます。

いつまでに寄付すればその年の控除になりますか

その年の 1 月 1 日から 12 月 31 日までに支払いが完了した寄付が対象です。 年末は決済のタイミングで年をまたぐことがあるので、寄付先の締切表示を確認してください。

執筆・運営

このページは MoneyTools Lab(ふるさと納税シミュレーター運営)が執筆しています。 運営者は税理士・ファイナンシャルプランナー・社会保険労務士等の有資格者ではありません。 内容は参考情報としてお読みいただき、具体的な税務判断は専門家にご相談ください。

運営者の背景・計算の検証方法・AI の利用範囲は 運営者について に書いています。

本ページと当シミュレーターの内容は、令和 8 年分(2026 年分所得)の税額計算に基づく試算です。 表示される金額は目安であり、実際の控除上限額は自治体が確定した課税所得によって決まります。 制度改正や自治体ごとの取り扱いによって結果が変わる場合があります。最終的な判断は、 お住まいの自治体や税務署、有資格の専門家にご確認ください。